【出典:全訳読解古語M】
こころ-ばせ【心ばせ】

[名]
(1)気だて。性格。
[例]「−−のなだらかにめやすく、憎みがたかりしことなど」〈源氏・桐壷〉
[訳]→「なだらか(2)」用例訳
(2)すぐれた気配りや心づかい。
[例]「はかなき木草、空の気色ケシキにつけても、とりなしなどして、−−、推しはからるるをりをりあらむこそあはれなるべけれ」〈源氏・末摘花〉
[訳]つまらない草木や空のようすまでも歌に詠んだりなどして、(その人の)心づかいがしぜんと察せられる折々があってこそ、かわいいと思うものだろう。
(3)思慮深い心がまえや分別。
[例]「何の−−ありげもなくさうどき誇りたりしよと思オボし出づるに」〈源氏・夕顔〉
[訳](軒端荻ノキバノオギは)なんの分別もなさそうで、はしゃいで得意そうであったよと、(源氏は)思い出しなさるにつけ。
(4)情緒を解する心。風流心。
[例]「藤の花を手折り、松の枝につけながらもって参りたり。『−−あり』なんど仰せられて、御感ギヨカンありけり」〈平家・4・還御〉
[訳]藤の花を手で折って、松の枝につけたままで持って参上した。(上皇は)「風流心がある」などとおっしゃられて、お褒めになった。
【関連語】
「ばせ」は、「顔ばせ」「腰ばせ」の「ばせ」と同じ、在り方やようすの意を表す接尾語「はせ」の連濁形。「心ばせ」は天性に近い、本質的に持ちあわせた性質であるのに対して、「心ばへ」は心のあらわれをいい、「心づかひ」「心もちゐ」「心づけ」は臨機応変な心のつかい方をいう。


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