【出典:故事ことわざ】
東道(とうどう)の主(しゅ) 《故》
[出典] 〈左伝(さでん)・僖公(きこう)三十年〉
道案内者。主人となって来客を案内し世話する人。春秋時代に鄭(てい)の国が、秦(しん)と晋(しん)との両国に包囲されて滅びそうになった時、鄭の燭之武(しょくしぶ)が秦伯(しんぱく)に会い、鄭を滅ぼしても秦には何の利益もないので、鄭をこのまま残しておき、殿様が東にお出かけの時、道案内役になされたらいかがですか、といった故事に基づく。
[原文] 「燭之武(しょくしぶ)……秦伯(しんぱく)(秦の殿様)に見(まみ)えて曰(いわ)く、秦(しん)・晋(しん)、鄭(てい)を囲む。鄭既に亡(ほろ)ぶるを知れり。……若(も)し鄭を舎(お)きて以(もっ)て東道の主と為(な)し、行李(こうり)の往来に、其(そ)の乏困(ぼうこん)に供せしめば、君も亦(また)害する所無からん〔燭之武(しょくしぶ)が秦伯(しんぱく)に面会して言った、秦(しん)・晋(しん)の二大国が我が鄭(てい)の国を囲み、鄭はもはや滅亡を覚悟しております。もしも鄭を攻め取らずにこのままにして、殿様が東にお出かけの時の道案内役にし、使者の往来の際に、不足の物資を供給させるようになさるならば、殿様の方にも損はございませんでしょう〕」